無地Tシャツがおしゃれ着として一枚で着るようになった歴史とは。
無地Tシャツといっても、厚手や薄手、メンズやレディースやキッズ、高級なブランドから激安の無地Tシャツまで様々あります。一枚のコーデではダサいと思われていた無地Tシャツでしたが、最近では無地Tシャツをシンプルに合わせるノームコアという言葉が流行っています。
もともとは海兵(MARINE)たちの下着として生まれたTシャツでしたが、さまざまな付加価値とともに進化してきました。一枚で着るアンダーウェアとしてはもちろん、ユニフォームとしての用途、無地Tシャツをおしゃれとして着用すること。今や私たちの生活には欠かすことのできない洋服がTシャツなのです。
では、そもそもTシャツとはどのように誕生して、どのように使われてたのでしょうか。Tシャツが出来上がった歴史について紐を解いていこうと思います。
1.日本製ではない=無地Tシャツの起源
無地Tシャツが誕生した起源は、第一次世界大戦中(まさに戦争真っただ中)のアメリカ海軍船内で船員たちの下着として採用されたことから始まるといわれております。
それまでの海軍の船員は、ウール素材の厚手の制服に身を包んでいましたが、Tシャツは軽くて動きやすく、洗濯してもすぐに乾くため、まさに画期的なものとして認識されました。海軍の 船員たちはもちろん必然的に厚手のウール素材の制服を脱ぎ捨て、Tシャツ1枚の姿で業務に勤しむようになりました。
そして、海軍を退役し陸に上がった後も、元海軍船員であった彼らは、Tシャツをまとい街中を練り歩くようになりました。
言うまでもなく、街の人々は、戦火のヒーローたる元海軍船員の彼らのコーデに憧れました。 そして1930年頃、当時の大手下着メーカーが、世界初の一般市民向けのTシャツを、"コブシャツ"(水兵シャツ)と名付けて販売したと言われております。
2.人気が出た無地Tシャツ
時は流れ、第二次世界大戦後の1950年中頃、当時はまだ下着としての認識が強かったTシャツを、復員学生や労働者たちは、アウターとして着用しました。 それは、ジーンズとともにブルーワーカーズたちの象徴となり、ある種のムーブメントを生み出すのです。 そして時代は、2人のカリスマを作り上げます。 そう、ジェームス・ディーンとマーロン・ブランドの2人です。 彼らが銀幕のスクリーン中で見せたTシャツ&ジーンズという姿は、瞬く間に全米各地に飛び火し、既存の価値観へ反抗し挑戦する若者たちのシンボルと捉えられたのです。
今現在、最高のおしゃれでかっこいいシンプルコーデであるノームコアファッションはここから生まれました。まさに、Tシャツはインナー(下着)という概念から、おしゃれなもの(ファッション性として)へのパラダイムシフトをした瞬間ともいえます。
こうして一躍ファッションとしての市民権を得たTシャツは、1960年代に入ると、また新たなステージを迎えます。 それは、時に企業のロゴなどをプリントした広告としてのメディアツールであり、時にアイデンティティを主張するキャンバスであり、"単なる洋服"としての価値を超越した、コミュニケーションツールとしての姿でした。 さらには、LOVE & PIECEを叫ぶヒッピーカルチャーや、政治、宗教などへの反体制のロックやパンクシーン、当時の最先端現代アートであったポップアートなど、さまざまなカウンターカルチャーの象徴として、キャンバスとして、一般層からマイノリティに至るまで、幅広く浸透していきました。
3.無地Tシャツはおしゃれのスタンダードとして
その後、無地Tシャツはファッションアイテムのスタンダードとして確固たる地位を確立し、1998年、さらに新たな局面を迎えました。
それは、現在ではおなじみであるパソコンを使用し、自分でTシャツをデザインすることのできるキットが開発されたのです。
そのデザインキッドは3000種類の既存デザインと2万種類もの画像転写シートをセットにした、プロ顔負けのTシャツが作成できるキットでした。もちろんこのオリジナルプリントは一般ユーザーの心を見事に掴み、その瞬間、かつては海軍・海兵たちの下着として生まれ、50年代には反骨精神の象徴として受け入れられ、いつしかコミュニケーションツールにまで進化してきたTシャツに、またひとつ新たな概念が生まれた瞬間でした。
それは「消費者自らがデザインする」という、いわば"オリジナルメイド"という概念でした。
そして現在、今やTシャツは、音楽フェスや映画などの商業的なプロモーションの媒体から、大学や高校の文化祭などにおけるプライベートなユニフォームという分野まで、営利・非営利を問わずして、大小さまざまなコミュニティーにおける、オリジナルメイドの洋服としても認識されるようになったのです。
常にシンプルでカジュアル、それでいて主張性も強く、メッセージやオリジナルデザインを描き出す"キャンバス"でもあり続けるTシャツ。 これからもその存在は自由の象徴であり、あらゆる"オリジナルメイドウェア"の原点として愛され続けていくことでしょう。
4.まとめ
無地というシンプルのTシャツもあれば、わざとぼろぼろにしたダメージ加工、キャラクターなどがオリジナルプリントされているTシャツ。必ずと言っていいほど、誰しもがほぼ毎日着用しているTシャツ。元はといえば、たった100年ほど前、海兵の下着として始まり、それが今ではおしゃれコーデの基本の一つとして確立しました。
一枚20000円以上もする高級なブランドのTシャツがあれば、100円という激安な価格で購入できてしまうTシャツもあり、使う人、着る人、様々の人の心を満たしています。
作業着やインナーとして始まった歴史が、ファッションアイテムとして確立し、更に、コミュニケーションツール、企業などの広告としてのツールとしての役目を担うTシャツ。
たった100年でこれだけ変化をしたTシャツは、今後どのような進化をしていくのでしょうか。
そんな変わり続けていく無地Tシャツにこれからも目が離せません。